安全・安心なガラス

安全・安心なガラス

ガラスは、採光や眺望という観点で、建築設計の重要な要素であると考えられていますが、実は安全やセキュリティ面でも考慮されるべき重要な要素です。住む人の安全を確保したり、自然災害の被害を小さくしたり、野生動物や周辺環境への影響の最小化するなど、その目的は様々です。ガラスは建築物の設計の中で安全とセキュリティの機能を維持・向上させながら、建築家が理想とする外観デザインを実現するための革新的なソリューションを提供しています。今日、私たちが目にしている一般的な安全ガラスは、主に人の安全を念頭において作られてきました。しかし、技術、建物のデザインや建築法規が変化していく中で、安全ガラスの設計は建物の堅牢性の確保と同時に、人や動物の安全確保の両立が求められています。

人のための安全ガラス

安全ガラスは、衝撃による破損によって引き起こされる切り傷や刺し傷のリスクを軽減するために「安全に」割れるガラスと定義することができます。一般的に、安全ガラスは合わせガラスと強化ガラスで構成され、それぞれ異なる安全性を発揮しています。

網入りガラス

ガラスが割れて破片が落下する危険性に対処するために考案されたガラスです。1893年のシカゴ万国博覧会では、ガラスの破片が落下し、来場者に怪我をさせないよう、ガラスの張り出しの下に金網が設置されました。やがて、ガラス内部にワイヤーを入れて製造されるようになり、のちにそれが安全対策ガラスとしての網入りガラスへと発展していきました。 (注 : 現在、多くの国では、網入りガラスは、大きく鋭い破片が割れたときに落下する危険があるため、安全ガラスとは見なされていません。火災時の延焼を防ぐ防火ガラスとしての利用が一般的です。)

合わせガラス

合わせガラスは、2枚以上のガラスを中間膜(樹脂膜)で貼り合わせたものです。衝撃を受けて割れても、中間膜がガラス片の飛散や脱落を防いでくれます。より硬い中間膜を使用することで、合わせガラスの性能を強化することができ、現在ではフレームレスのガラス柵としてもよく使用されています。

強化ガラス

強化ガラスは、表面に高い圧縮応力を発生させる熱処理を施したガラスです。フロート板ガラスを軟化点近くの約 650℃まで熱した後、両面に常温の空気を均一に吹き付け急冷して製造します。表面のみが急激に冷やされることで、ガラス表面には圧縮応力層が、内部には引張応力層が発生します。これにより、強化ガラスは安全面において2つの大きなメリットをもたらします。

1)強化ガラスは標準的なフロート板ガラスと比較しておよそ4倍の強度を有します。

2)強化ガラスは、割れた際に全体が細かい粒状に砕けることで、大きなガラスの破片で負傷するなどのリスクを低減させます。

防火ガラス

火や熱に耐え、ガラスの脱落を防ぐガラスとグレージング部品を防火ガラスと呼びます。多くのケースで、ガラスが有する時間的制約(20分の耐火性能)のみならず、消防設備の耐久性などガラス以外の防火装置の要素も含めて防火性能が評価されます。防火ガラス製品は、熱に耐えられるように設計されたセラミックガラスか、複数のガラス層と熱吸収液体/ゲルを含む複雑な組み合わせになっているのが一般的です。

安全ガラスは、1920年代の自動車産業において、フロントガラスのオプションとして導入されましたが、現在ではすべての自動車ガラスに加え、ドア、アトリウム、天窓などガラスの落下による衝撃や負傷のリスクのある建築物に標準的に使用されています。

現在、建築に暮らす人々の安全・安心に関わるガラスの規格は、耐貫通性、耐弾性、耐爆性などにも広がっています。1つのガラスが複数の要求性能を満たすこともありますが、用途や機能によってそれぞれ特有の試験方法があり、その品質が保証されています。

建築物の堅牢性と特殊な対策

安全ガラスは人がぶつかった衝撃から守るために設計されていますが、自然災害から建物を守る上でも有利に働きます。風雨や台風、地震はガラスに直接的な破損を引き起こし、居住者や建物内部を危険にさらす可能性があります。

台風やハリケーンなどの自然災害向けに設計された防災ガラスは、ガラスの破片が飛散して居住者が怪我をするのを防ぐだけでなく、窓ガラスの脱落を防ぐことができます。台風などの暴風の際に窓ガラスが割れたり、剥がれ落ちたりすると、建物内が風雨にさらされるだけでなく、建物内に高い内圧がかかり、構造部材にダメージを与え、最終的に構造破壊につながる可能性があります。防災ガラスは、台風などの暴風雨による構造物の損傷を最小限に抑えることで、居住者の被害を最小限にすることに重点を置いています。そのため、建築デザインにおいて重要な要素は、ガラス破片の発生を考慮した構造的な安全性の検討になります。これらの製品の安全基準を分かりやすく示すために、ハリケーン等級、耐震等級、侵入防止等級、マルチスレット(複数の脅威)等級などの安全性能表示が使用されています。

さらに、一部の特殊ガラス製品の中には、非常に特殊な等級と設計により、人への被害を最小限に抑えるように設計されたものがあります。防弾ガラスは、ガラスとプラスチックの多層構造により、中型から小型の武器による貫通を最小化または阻止するように設計されています。一方、耐爆風ガラスは、ガラス破片の飛散を最小限に抑え、飛散物による負傷を防ぐことで、被害を軽減するように設計されています。

動物の安全と幸せのために

都市を建設し、発展させる一方で、建築デザインが野生動物に与える影響にも考慮が必要です。動物愛護に主眼を置いた建築物に関する研究が進み、鳥や亀にやさしいガラス利用に関する法律が様々な国で導入されています。

鳥類保護のためのガラス

鳥は窓枠やガラス窓を物理的な障壁であることを視覚的に理解することが出来ません。その代わり、鳥はガラスに反射して映る自然環境の映像をその先にある風景として理解し、広い空への飛行経路が建物によって遮られていないと錯覚してしまいます。それため、鳥は誤って窓ガラスへ衝突してしまうことが多々起こるのです。鳥が窓に誤って飛び込むことを防ぐには、いくつかの方法があります。紫外線コーティング、模様入りフリット加工、エッチング加工、特殊な中間膜の利用などです。鳥はこれらの対策により、ガラスを障壁として認識することができるようになるのです。

ウミガメにやさしいガラス

ウミガメの子ガメは、月を追って夜間に海に移動します。海辺の建物からの強い光は、子ガメの方向感覚を失わせ、海から遠ざけ、外敵にさらされる時間を長くしてしまう危険性があります。巣立ちの時期にカメを保護するため、カメにやさしいガラスは可視光線の透過率を下げています。これにより、浜辺に届く人工的な光の量を減らし、子ガメは月の明るい光の方へ移動することができるのです。

このように、ガラスは目的に応じた様々な安全・安心を提供することが出来ます。ガラスは非常に汎用性の高い素材であり、空間デザインに合わせた形状や機能に合わせた形で設置できることから、居住者側はガラスが提供する安全・安心を自然な形で受け入れることが出来ます。個人の安全性、建物の堅牢性など、ガラスの用途と提供する機能は、将来の設計ニーズに合わせて今後も拡大し続けることが期待されています。

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