コネクティッド・ドライビング

コネクティッド・ドライビング(自動車のつながる化)

少し前までは、運転中にクラクションを鳴らしたり、ヘッドライトを点灯させたり、ウィンカーを点滅させたりすることを「外部環境とつながっている」と表現していました。しかし、これらのつながりは、音や視覚的な手段によってのみ行われ、「自動車用窓ガラス」(グレージング)の役割は比較的限定的でした。昨今のモバイル通信、データ処理、ディスプレイシステムの急速な進化に伴い、ドライブ体験はもはやその場所だけではなく、グローバルな環境とのつながりへと広がり、グレージングはこの発展の中で、新たなメディアやプラットフォームとしての役割が期待されるようになりました。今回のマンスリーコラムでは、アンテナ一体型グレージング、先進運転支援システム(ADAS)とグレージングの交換、ヘッドアップディスプレイ(HUD)等、グレージングの視点から、自動車分野におけるコネクティビティの「いま」について皆様にご紹介していきます。

ディスプレイとデジタルサイネージの進化

電子通信の急速な進化に伴い、帯域の異なる様々な周波数に対応した部品が開発され、利用され続けています。ガラスは可視光線だけでなく、通信に必要な電波も透過することが出来ます。NSGグループでは、そうした特性を利用し、日本においてAM/FMの両方の電波を受信可能なアンテナを搭載したフロントガラスを1970年に開発しています。それ以降も通信技術の進歩に伴い、アナログテレビ、電話、衛星ラジオ、デジタルテレビ、デジタルラジオ放送など、より多くのシステムをシームレスに車両に組み込むことが望まれ、グレージングがデザインされるようになってきています。NSGグループでは、日本とドイツにアンテナ設計の研究拠点を集約し、お客様のご要望にお応えできるよう体制を整えています。

車両後部窓用に設計されたガラス設置用アンテナ

また、車内に搭載されている電子機器の数が急速に増加し、それぞれの機器を統合し、正しく機能させることが難しくなっています。そのため、アンテナガラスの信号性能を向上させるために、コンピュータシミュレーションによる開発技術がますます活用されるようになっています。

アンテナ性能設計を支援するコンピュータシミュレーション

先進運転支援システム(ADAS)

自動車と周辺環境をつなぐワイアレスシステムであるV2X(車車間・路車間通信)のためのガラス設置用無線アンテナとV2N(クルマとネットワーク間の通信技術)の5Gアンテナの開発は、先進運転支援システム(ADAS)の進化には必要不可欠です。自動車とその周囲の環境とのコネクテッド技術は主に車の衝突を回避することを目的としており、この分野の開発は、世界各国の法律に基づき、安全に実施されています。 精密測位、レーダー(長距離、低照度)、カメラ(対象物の解析)、ライダー(中距離測定)、超音波(短距離測定)など、組み合わせる技術の種類や解析の正確さにより、ADASの精度がより高いものになります。

安全性向上のためのADAS車間通信のイメージ

このように自動車の安全システムが進化し、運転支援機能が高度化するにつれ、それらを確実に作動させる為の電波透過性の高いグレージングが重要な役割を果たすようになってきています。レーンキープアシスト、インテリジェントスピードアシスト、物体認識などの機能は、フロントガラスに取り付けられたカメラシステムによって提供され、ドライバーに安全な走行環境を提供します。また、ライダー(光検出と測距)システムは、赤外線レーダーを利用し物体の距離を計測しますが、正確な位置を計測するため、非常に高い透過率のグレージングが必要とされています。NSGグループでは、ライダーの性能を最適化するため、グレージングの透過率を高めるためのコーティングを設計・製造する高い技術を有しています。

さらに、カメラの視野はフロントガラスに設置されているワイパーやウォッシャー等によりクリアな状態に保たれ、グレージング内外に設置されたカメラは、湿気や氷の影響を受けないようヒーター等により正しく機能できるよう設計されています。NSGグループは、フロントガラスに取り付けるカメラの設計、カメラの光透過領域の最適化、カメラの局所加熱、そしてシステムが動作要件を満たしているかどうかの最終検査において、自動車メーカーと密接な協力関係のもと、開発を進めています。さらに自動車メーカーは、カメラを車に搭載した後の最終的な安全チェックとして、各種システムに対してカメラが適切に作動しているか設定調整を綿密に行います。

NSGグループのフロントガラスに装着されるブラケット(カメラとセンサー用)の数々

先進運転支援システムーグレージング交換

先進運転支援システム(ADAS)用のカメラや安全システムは、石による損傷でフロントガラスを交換しなければならない場合も、新車で納車された際と同様の品質を保ち、正確に機能する必要があります。その際に重要となるのは、ガラス交換の技術者の徹底した交換・キャリブレーション(設定調整)技術と最高品質の交換用フロントガラスです。

NSGグループでは、サービスセンターから離れた場所でフロントガラスを交換する場合でも、ガラス交換サービスプロバイダーが、車載カメラシステムのキャリブレーションも提供することが出来るようサポートしています。これまでのフロントガラスの交換は、割れたガラスを新品のNSG製品と交換するだけでした。しかし、ADASシステムの導入により、搭載されているすべてのセンサーが周囲の環境をきちんと「見て」「聞いて」「感じる」ことが出来ているか調整する必要があります。それらのセンサーの多くは、フロントガラスに直接設置されています。そのため、フロントガラスの形状が悪かったり、取り付けが不適切だったりすると、この重要な安全システムが意図したとおりに作動しなくなります。

ADASシステムにより利用可能な機能

自動車が車線から1mも離れていないと「思った」場合、車線逸脱警報が正しく作動せず、常に道路の中央に押しやられるか、車線をはみ出ることになります。さらに深刻なのは、先行車が実際よりも遠くにいると「思い込んで」しまった場合、緊急ブレーキシステムが意図したよりも遅れて作動してしまうことです。NSGグループは、最高品質のガラスを提供するだけでなく、車両が「見ているもの」と「現実」を一致させるためのキャリブレーションツール「Opti-Aim」を初めて開発、使用したパイオニアでもあります。

車線逸脱警告のADASキャリブレーション例

NSGグループでは、ピルキントン北米ブランドを通じて、ガラス交換サービスプロバイダーに向けたキャリブレーションツール「Opti-Aim」とサービスの両方を備えたソリューションを提供しています。また、欧州の拠点においては、どこにいても顧客のために専門的なキャリブレーションが行えるよう、遠隔でガラス設定調整作業を支援する、リモートキャリブレーションオーバーエア(ReCO)サービスを開始し、安心・安全なガラス交換作業のサポートをしています。

北米の補修用ガラス市場におけるNSG ADASソリューション「Opti-Aim

ヘッドアップディスプレイ

さらに進化を続けるコネクテッド・ドライブ技術として、ヘッドアップディスプレイ(HUD)の活用があります。これまでドライバーが見る仮想イメージは、フロントガラスから2mほど離れた空間に投影されていました。HUDは、光の反射を利用して投影するシステムであるため、局所的な光学的歪みを防ぐために、高度な面精度を有したフロントガラスと画像の鮮明さを最大限に高めるために、特別に設計されたPVB(ポリビニルブチラール樹脂)中間膜が利用されています。NSGグループでは、拡張現実HUDを使用した新しいシステムの量産を始めており、これにより自動車走行中の仮想イメージの投影距離が8m以上に広がり、ダイナミックなディスプレイ駆動を実現しています。この先進ディスプレイには、NSGグループのフロントガラス用高精度プレス工法(フロントガラスに適切な曲げを加える高度な技術)が使われています。

ヘッドアップディスプレイ画像投影イメージ

コネクティッド・ドライビングとグレージングのこれから

自動運転の実現に向けて、グレージングの役割はますます重要となると考えられています。風雨を防ぐという本来のグレージングの必要性に加え、視覚的・光学的な透明性、ディスプレイの反射性、様々な電磁波通信システムとの互換性など、グレージングの持つ特性が未来の自動車におけるデジタルエンジニアにさらなるソリューションを提供することでしょう。そして、自動車の「ヘッドライトが光る」、「クラクションが鳴る」といった技術は、今後の自動車技術の進化において、教科書に載るような古い出来事となる日が来るかもしれません。

周囲の環境とつながる未来の車両のビジュアルイメージ

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